Person 19
基本的に日本人は楽しいガイジンが好き。
はっきりものを言いすぎたり、
暗かったり、ちょっと困っていたり。
面倒くさそうな外国人だと、
相手にしてもらえず、寂しくなるんだ。
寝たり、遊んだり、仕事したり。
自分の生活のすべてを日本でやってみようと思って来た。
だから、日本に来てからの三年間はチャレンジの毎日。
最初は留学生として日本に来て、
いまは日本の会社で仕事をしている。
エネルギー会社の開発プロジェクトチームでの
翻訳と通訳の仕事をしながら、
ベンチャー・ビジネスにチャレンジしているんだ。
ティーンエイジャーのころから、
サラリーマンになることは考えなかった。
自分がほんとうに興味のあることに
トライする生活をしたかったんだ。
この三年間、ベンチャーでは、
いろんな輸入販売ビジネスにトライしつづけている。
日本で人気の出そうな商品を探して、輸入販売するんだ。
なぜ、そんなリスキーなことをしているのかって、
聞かれることもあるけど。
ぼくは、こういうことをするのに
リスクなんてないと思っている。
何もしないことは、チャンスを逃していること。
チャンスを逃すことも、人生のリスクだと思う。
それなら、やってみる方がいい。
いちばん低いリスクでやっていけるプランを
考えてトライしているんだから問題は何もないよ。
輸入ビジネスは、
日本人の兄弟が経営している会社との
共同事業として行っているんだ。
ぼくがマーケティングしたアイデアを出して、
彼らがOKと言えばプランを実行する。
日本でのビジネスのやり方は、
トラブルを起こさないことが大切だね。
損をしないように、というのが第一番。
ものの言い方ひとつでも、
損をしないように、悪く思われない言い方をする。
たとえば、ぼくへの批判のしかた。
「こんな商品は日本では売れない」と言う。
どうしてダメなのかは、はっきり言わない。
ビジネスをよくするためなのに、
アイデアの何が悪いかを批判することはしない。
ぼくのアイデアのまずさは、あいまいにしたまま、
「君は外国人だから、わからない」で終わってしまう。
日本人は、はっきりものを言うことを好まない。
自分が言わないだけじゃなく、
人から言われることも受けいれないね。
たとえば「ノー」と断っても、それはちょっと興味ない。
「ノー」と言うコトバは耳に入れないね。
「もうちょっと考えさせてください」とか、
「また今度」とかいう返事を求めている。
だからぼくが、日本人に何か断りたい時、
はっきり断るのは強すぎて、受けいれられない。
あいまいに言った方が、受けいれられる。
あいまいで分かりにくいとは思うけど、
そういうことも、だいぶ覚えてきた。
それから日本でのビジネスでは立場が大事だね。
ぼくがプロジェクトチームに参加している
エネルギー会社は、
日本でエネルギー開発の先駆的立場なんだ。
それで、大学と共同開発をしている某自動車会社の人が、
ぼくのいるプロジェクトチームの部長に
エネルギー開発の話を聞きにきたことがあるんだ。
その時、話の大切なポイントになると、その部長は
「それは前足のない馬のようなものですよ。
いや、もしかしたら、
後ろ足のない馬のようなものかも…」と言った。
何がどうなのか、はっきり具体的に言わない。
シンボルを使って話をする。
これって自己満足だよね。
わざと話を分かりにくく、ややこしくしているんだから。
最初は、なぜ、そんなことを言うのか
よく分からなかったけど、
すぐにこれは、部長と話を聞きに来た相手、
会社と会社との闘いなんだって気がついた。
部長にとってよその会社の人間と話をする上で
いちばん大切だったのは、
自分がその分野での先駆的会社の人間だってこと、
自分の方が上にいるんだということを、
示すことだったんだね。
日本での大人どうしの闘いは、
誰が立場の強い人であるかを見せるために行われる。
理論の闘いではないんだ。
とにかく自分の立場をアピールし、守りたいんだ。
日本人と付きあっていく上で、いちばん難しいところだ。
日本の会社で仕事をしていて、
自分では壊しようのない壁だと思うのは、そこかな。
ぼくは日本の会社の中では外国人の立場として、
つき合っていかなければならない。
理論を闘わせたくても、
相手がそれを面倒だとか、好ましくないと思ったら、
「君は外国人だから」と片づけられてしまう。
「君は子どもだから」と言われるようにね。
そう、日本人は面倒くさいことが嫌いなんだと思う。
会社に限らず、留学していた大学でも、
国際交流会館のようなところでも、そう感じた。
大学の教授はノルマとしての授業をするだけで、
生徒と個人的な細かな話をしない。
生徒とは15分も話せば十分だって感じだった。
国際交流会館の係の人も、
外国人があれやこれや要求や希望をもってくるのは、
とても面倒くさくてイヤなことみたいだ。
たとえば、ぼくが何か催しを開きたいというと、
反対はしないけど、助けてくれない。
すればー、って感じ。
反対の意見も、サポートの意見もないんだ。
面倒くさい外国人にならないように気をつける。
日本で暮らしていくなかで、
けっこう気をつけているポイントだと言えるね。
仕事をしている会社でも、
プライベートで会う人たちの中でも。
日本人は、基本的に楽しいガイジンが好き。
外国人の立場から言うと、
ちょっと困っていたり、暗かったりすると、
誰も相手にしてくれない。
助けてくれない。
そしてよけいに寂しくなってしまう。
だから暗い人は、
やさしく接してもらえる確率は低いね。
日本にいる外国人は、
チヤホヤされて、ものすごく忙しいか、
全然ヒマか、どっちかね。
ヒマで寂しい外国人になりたくなければ、
一緒にいて楽しいガイジンだと
日本人から思われる話をしたり、態度でいなくちゃ。
だから、ぼく、今日みたいに、
こんな話、自分の思っていることを人に話すのは、
日本に来て初めてだ。
ハンガリー・20代前半・男性
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