企画編集・執筆/紙からWEBまで 言葉の工房オリジン コトバはソウゾウの限界を知らない。
     

在日外国人インタビュー集

     
 

Person 15

 

人は同じ心を持っていると信じてる。
わたしの方から腹を割って話す。
心をひらいて強く相手に働きかける。
日本の言葉で、日本人に息を合わせて話し合う。

 

旅行と建築の勉強を目的に来ました。
そのまま日本で大手の工務店に勤務して、
いまは設計事務所で、
建築設計士として仕事をしています。

日本で暮らして11年目になりますが、
とくに困った経験はないですね。
しいてあげるなら、部屋探しの難しさ。
外国人に貸したがらない大家さんが多いらしいです。

これといって人間関係に問題を感じたことはないです。
もともと、性格的に人間関係に困る方ではないんです。
それは相手が日本人でも同じことです。
初対面の人ともリラックスして接することができるし、
人に合わせる質です
から。

日本人の方には、初めて会った時、
面白がったり、怖がったり、いろんな人がいますけど。
別にそれを外国人への偏見だとか感じませんし。
むしろ、仕事面ではプラスだと考えていますよ。
外国人だということで印象が強いから、
一度で顔を覚えてもらえる。

それに、仕事上で合う人は会社を見ているから、
外国人であるということは関係ない。
とくに日本で最初に就職した会社は、
全国的に知られている大手工務店だったので、
会社名があれば、
わたし個人が外国人でも日本人でも関係なかった。

パーティーなどで会社名を告げると、
相手の人は、ホーッと言うことになる。
わたし個人ではなく、その会社を見ているんですね。
仕事が絡めば、どこの国でも立場が前に出る、
というのは同じでしょうけれど。

いまは建築設計事務所で仕事をしていますけれど、
やはり、外国人だからということで
困った覚えはないですね。
建築設計という職業は、
相手の要求を聞いて実現するのが仕事ですから、
日本人との会話に指摘されがちな、
遠回しな腹の探りあいということもないです。
おたがいに分かりあおうとするのが基本にありますから、
二度三度と会っているうちに
相手の考えていることは分かるようになります。

まあそれでも、ほかの外国人と比べれば
日本人はあまり説明をしないとは感じますけどね。
ネパールの諺に、「説明する人は小麦粉でも売れる。
説明しないと米も売れない。」というのがある
んです。
放っておいても売れる米だって、
その良さを伝えることがなければ売れないし、
小麦粉のように使い道の少ないものでも、
ちゃんとその良さや使い方を説明すれば、
米みたいに売れるということ。

ものごとは、どんなことでも相手に分かるように
ちゃんと説明することが大切

説明せずに意見を押しつけたり、命令したり、
黙っていてもわかるだろうという態度だったりでは
円滑にことは進みませんよ。
だから、わたしも人に説明しますし、
人にも説明をしてもらいます。

上司も、日本人ですけれど、
わたしには命令ではなく提案でものをいいます。
わたしはお客さんが喜べばいいわけだから。
お客さんの要望を汲んで、カタチにする、
それがわたしに任された仕事です。
ですから、
お客さんとの話し合いで決めたわたしの仕事に対して、
上司が意見を押しつけるべきではないし、
わたしも聞き入れません。
上司が、意見を提案、説明して納得させてくれれば、
お客さんのため、良いものをつくるために、
その提案を取りいれます。

プライベートで付きあう人は、気もちの合う人を選べます。
日本人どうし、ネパール人どうしでも同じ。
友だちになる人というのは、
気の合う人が自然に残っていきます。
でも仕事上では、
気が合う、合わないで関わる人を選べないから、
人間関係に神経を使うとしたらそこでしょう。
いま話したように、わたしの場合、
上司ともきちんとコミュニケーションをとって、
良い仕事ができる関係をもてていますからね。

話し合うことが、人間関係の基本ですよ。
わたしは、人間は同じ心を持っていると信じています。
コトバの誤解や行き違いはあっても、
話をしていくうちに、いつかは心が通じる

それは相手がネパール人でも日本人でも、
アメリカ人でもフランス人でも関係ない。
こちらが腹を割れば、相手も腹を割る。
自分が心をひらいて強く相手に働きかければ、
それだけ相手からも強く返ってくる

壁にぶつけたボールみたいにね。

だからわたしは自分の方から働きかけます。
そのために言葉は、とても重要です。
言葉を覚えれば覚えるほど、
相手と息を合わせることができる

たとえば仕事の打合せでは、
誤解のない意志の疎通をはかるために
言葉はなくてはならない。
言葉は、お互いの考えを表す共通の定義なのだから。
プロとしてお金を取って生活していこうと思うのなら、
日本語を話せるようになるべきです。
旅行者ならば多少のミステイクを許されるけど。
わたしは日本で生活すると決めてから二年間、
大学で日本語だけを勉強しました。

初めて会った時、
相手の日本人はわたしの顔を見て外国人だと思います。
そして英語で話すんだろうなあと思った時、
わたしが日本語を
しかも大阪弁でバババッって話し出すと、
とたんにうちとけた雰囲気になります。

うちとけた雰囲気があると、
コミュニケーションが円滑になります。
そして共通の語彙が増えれば親しみが増すんです。

わたしは日本で何年か暮らしていながら、
日本語を覚えない外国人を快く思えません。
日本語を拒絶すると言うことは、
日本の生活を拒絶することだと考えます。
日本で日本人と人間関係を築いていくなら、
言葉で息を合わせることです。

 

 

ネパール・30代後半・男性

 
     

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