企画編集・執筆/紙からWEBまで 言葉の工房オリジン コトバはソウゾウの限界を知らない。
     

在日外国人インタビュー集

     
 

Person 13

 

自分の気もちを伝えられるだけ伝える。
気もちを精いっぱい正直に伝える、それが一番大切。
ほんとうの気もちを伝えないで、
ほんとうの関係が生まれるはずないんだ。

 

わたしは日系二世のアルゼンチン人。
両親は日本人だけど、わたしはラテン。
子どものころ、よくママのことを
首をしめつけるくらいに強く抱きしめた。
ママに、わたしがママのことを
どんなに好きか分かってもらいたかった
から。

そしたらママも同じくらい
ギューッと抱きしめ返してくれた。
ママもわたしのことをどんなに好きかが分かって
幸せだった。

大きくなってから母に聞いたんだが、
母はわたしのことを、何者?と思っていたらしい。
わたしは日本人なのに、この子はラテンだと。
日本人の両親からラテンのわたしが生まれた。

日本人の血を引いて、外見は日本人だけど、
わたしのソウルはラテン。
両親の国、日本で暮らすようになって40年経つけど、
いまもソウルはラテンのまま。

日本人の友人と南米からの船を出迎えに
神戸の港を訪れたとき、
船から降りてきた南米人と話しているわたしを見て、
日本人の友人たちは驚いていた。
わたしが別人のようだと。

日本人と接しているときは、
知らず知らずに日本人に合わせているのかもしれない。
それが、ラテンの人間と会ったことで、
ワーッとラテンの気もちが思いきり出たんだろうな。

自分の思いを伝えられるだけ伝える。
相手のことをどれだけ好きか、
それを精いっぱい正直に伝えるのが一番大切。
わたしはそう思っているし、そうして生きている。

ほんとうの気もちを伝えないで暮らすのは、
中身のない生活だ。
中身のない生活は、しんどい。

自分の気もちを精いっぱい伝えるために
わたしはズバズバ、ものを言う。

そういうわたしを、日本人はよく
怖い人だとか、キツイ人だとかいうけれど、違う。
わたしがものをズバズバ言うのは、優しいから。
ほんとうの気もちを相手に伝えようとする
優しさからなんだ。

逆に私の目から見れば、
ほんとうの気もちを伝えないで、
表面的にニコニコ付きあっている日本人の方が怖い。
その場だけ、気持ちのいいことだけ言い合って、
イイトコどりで人と付きあっている。

人と人が本気で付きあえば、
お互いを分かりあい、受けいれあおうとすれば、
時には真正面からぶつかることもある。
けど、それを避けて、
自分の正直な気もちを伝えなければ、中身のない付きあいだ。

ほんとうの気もちを伝えないで、
ほんとうの関係が生まれるはずがないんだ。

それなのに、気もちのいいことを言われたがって、
まともに相手と向きあわない
んだ。

いまの日本人は、家族の間ですらそう見える。
親が子どもの機嫌をとって、
叱るどころか、注意の一つもしないんだ。

わたしは近所の子どもに怒る。
よくないこと、道徳心のないことをしたら、
その場で叱るんだ、よその子でも。
でもその子どもの親は、
この子ったら、こんなことをするのよ、
そんなことを言うのよ、と許している。
なぜ、親なら自分の子を叱らない。
子どもに嫌がられたって、きちんと躾けてやらない。

親が親として言うべきことも言わない。
自分の子どもに向かって、
表面的な気もちのいいことしか言わない。

親が子どもにいい顔するために、
躾を放棄するなんて、恐ろしいことだ。
なぜ親はとことん子どもと向きあって
ものを言わない。
それが親の愛情じゃないのか。

叱る時は本気で叱る。
そして愛してる気もちを思いきり伝える。
それが親だろう、家族だろう。

他人のわたしが本気でモノをいっているのに、
親がそれを放棄している。

それがいまの日本の家族なのか。
お互いがほんとうの気もちを言うことを避けた、
意志の疎通のない家庭だ。
そんな家庭で育った人間が、
どうして心をひらいて、人と友だちになれるだろうか。

自分の家族とも心をひらいて、
気もちを伝えあうことをしていないのに、
どうして他人と心をひらいて話ができる?

日本人は議論をしないだろう。
自分の本心を隠して気もちのいいことを言いあうか、
意見に違いが見えると、ケンカになるか。
そうだな、わたしの経験で言うと、
日本人は意見が違うと議論ではなくケンカになる。

失礼なことを言わないとわきまえて、
意見を述べあうことが議論。
遠慮はしないで、わきまえをもって
自分の意見を正直に言いあう。
そこからお互いの理解が生まれるんだ。

自分の意見を述べて自己主張をすることと、
やりたい放題、言いたい放題とは違う。
譲るところは譲る、自分をセーブする。
それは相手を思いやる心だ。

思いやりをもたずに、友だちになれるはずがない。

正直な気持ちや意見をいうことと、
相手を傷つける言いたい放題とは違うのよ。
そういうことを、
いまの日本の親はなぜ身をもって、
子どもに教えてやらない。

いまの日本人を見ていると、
大人になりたくない人たちでいっぱい。
コトバやマナーの悪さ。
自分のことを、人間だと思っていないのか。
いくら経済を発展させて国際化したって、
人間がちゃんとしていなければ、
世界から軽んじられる。
げんに軽んじられているだろう。

わたしが子どもだったころ、
アルゼンチンで見ていた日本人は立派だったよ。
コトバや習慣が違っていても、
外国であるアルゼンチンで、ちゃんと尊敬されていた。
それは、ちゃんとしたマナーを身につけて、
自分をきちんともっていたからだ。

 

アルゼンチン・60代後半・女性

 
 
     

mail@i-origin.com mail@i-origin.com

このページの先頭へ






言葉の工房 オリジン / 企画編集・執筆 紙からWEBまで

Copyright(C)2006- MasakoInoue/Origin All rights reserved.