企画編集・執筆/紙からWEBまで 言葉の工房オリジン コトバはソウゾウの限界を知らない。
     

在日外国人インタビュー集

     
 

Person 10

 

日本人と仲良くやっていけるのだったら、
日本人のやり方に合わせる。
そんな態度の奥にある、
アメリカの考えに耳を傾けてくれる人が
ほんとうの友だち。

 

日本に来たのは三回目。
一回目は高校生の時、三週間のホームステイで。
あの時は日本語が話せなくて、
日本で生活したという実感がわかなかった。
こんなんじゃ、ただ外国に来ただけで
ほんとうの経験になってないって思った。
それで大学で日本語を勉強してから、
外大に一年留学してきたのが、二回目の日本。
留学から戻って、アメリカの大学を卒業したとき、
外国で仕事がしたいなあと思って。
日本語の能力と留学経験があるから、
国際交流に関する仕事で外国人を募集していた
日本に来ることに決めた。
それが今回の来日で、もうすぐ三年になる。

学生で一年、社会人として三年。
約四年の日本での生活は、内面に影響している。
言いたいことを抑えるという気もちが、
自分のなかに生まれた。
話す前に、
こんなことを言ったら相手がどう思うだろうと
考えてからモノを言うようになった。

とくに社会人として働くようになってからは、
日本の社会では
言いたいことを言えないことも分かった。
自分という人間を、
オープンに表現したらあかんって。

アメリカだったら職場で
たとえば誰かと付きあっているとか、結婚するとか、
自分のことをオープンに話しても大丈夫。
でもいま働いている職場ではみんな隠してる。
そういう話はタブーみたい。
恋人がいたり、結婚したり、
生きていたら誰にだってあるような、
自分についてのシンプルなことも言えないんだから。
強い考えや、思いなんて
自分の内面や個性に深く関わることは話せないでしょ。
だから日本人の中にいるときは、
自分という人間を強く表現することは避けてる。

僕という人間を見てもらいたい、
自分の考えていることを表現したいなぁと思ったら、
日本人の好きなやり方で付きあって、
そういう機会をつくるようにしてる。

ぼくの場合、
日本人とつきあうコツは、お酒に強くなること。
日本人はお酒を飲むと、いろんなこと、
自分の意見とか、考えとかを話すようになるから。
そこでぼくも、
自分の思っていることを話せるようになる。
日本人は、
暗くて煙草の煙がモウモウとしたところでないと
うちとけて話せないみたい。
ぼくはさわやかなところででも大丈夫なんやけど。
日本人といろんなことを話し合おうと思ったら、
お酒を飲むことが必要やね。

それから、日本に来て
嫌いなカラオケを歌うようになった。
ぼくのまわりの外国人は
ほとんどカラオケ嫌いのままで通してるけど。
ぼくは歌うようになった。
日本人と仲良くするためには必要やから。
ぼくが英語の歌をうたうと、喜んでくれるし。
それで日本人とうちとけて、
いろんな話ができるんやったら、ええもん。

ただチヤホヤされて、
日本人とパーティーでつきあうだけやったら、
そんなに日本人に合わせなくてもいいけど。
ぼくは、それだけではイヤやから。

日本人と一緒に集まると、
キャーキャー騒がれて、チヤホヤされる。
いい気になってるみたいに聞こえるかもしれへんけど、
それは事実。
女の子もワーッと群がってくるよ。
日本に来て間もないころは、
ぼく、こんなにモテるんかって目がハートになったがな。
でもそれは、アメリカ人だったら誰でもよくて
寄ってくるだけやからね。
ぼくという人間と話をして、ぼくを認めはしない。
それが分かってからは嬉しくないね。

そういう体験を通じて考えたんやけど。
多くの日本人が、外国人というと、
メディアの中のアメリカ人やイギリス人をイメージして、
個人一人一人の外国人すべての上にも、
そのイメージを乗せている気がする。
日本人が抱いている外国人像は、
メディアの中で笑って動いている姿であって、
悩んだり、落ちこんだりして生きている
普通の人間じゃない。
目の前の外国人にも、それを要求している。
たまさか出会った外国人を
メディアの外国人あつかいして、
パーティーで一緒にキャーキャー騒ぐのが楽しいみたい。

そういう時そこにいる日本人は
人間性をもつ一個人としてのぼくといたいわけではない。
それは分かってるし、それを嫌う外国人仲間もいるよ。
でもぼくは、甘んじてそれを受けいれてる。
あれが日本人独特のノリで、
それによって、
みんなが、ぼくと話せるんやったらそれでいいもん。
まずは話してみるのが、人間関係の始まりやからね。

そうやって日本人の中に入るようにしてるおかげで、
ほんとうに友だちと呼べる人に出会えたよ。
40過ぎの男の人で、世代は違うけど、
その人とは個人と個人の人間関係を築ける。
以前にその人主催の
日本人、外国人が集まっての旅行とパーティーに参加して
仲良しになった。

その人は、ほんとうの友だち。
お知り合いや、遊び友だちていどの人間関係で
止まってしまう他の日本人と違うところは、
アメリカの考えを最後まで聞いてくれるところ。

自分の考え方ばかりを押しつけたり、
むやみにこちらに合わせるのではなく、
ちゃんとこちらの考え方を聞いて、
そこから分かりあおうとしてくれる
人。
異なる文化や考え方をもった人間と
ほんとうに理解し合って、ともに過ごしていこうと
考えて実行してる。
その人は、日本人、アメリカ人の中だけじゃなく、
どの国にあっても、珍しい人やと思う。

アメリカの考えを聞いてくれない人たちは、
その場の雰囲気や、話の流れをこわさないように
周りの日本人と合わせて話していると、
すぐに日本人的ね、って言う。

日本に来て、日本人の社会で暮らしているから、
ぼくは日本人のやり方で、人と付きあってる
ねん。
でも根本的に、考え方はアメリカのまま
日本人と仲良く付きあっていくために、
パーティーや食事の場をこわさないで
表面的にうまくやるために、
態度を合わせているだけなのに。
そんな気もちまで分からないで、すぐに日本的と言う。

日本人の態度や考え方に同意したら、
即、日本人的な外国人と言う人、多いよ。
日本人の考え方に歩み寄って、分かろうとしてるとは
なかなか思わへんみたい。

分かろうとしているとは思ってないのと同時に、
わりと一般的な日本人の態度に、
“ガイジンがいくら努力しても、
日本のことは分かれへんのや”
という考えや気もちを感じる
よ。

たとえばその一つに、
日本語は日本人だけが話せると思ってるみたいやし。

一時間くらい日本語で話した後で、
ちょっと諺を使うと
「すごい、諺なんて知ってる」のと驚かれて、
「平仮名、読める?」と聞かれる。
漢字を使ってる本なんて読んでいたときにはもう、
こっちがびっくりするくらい驚かれたし。

日本人は、
日本の文化は日本人以外には分からないと
思いこんでいる。

おもしろいね。
その逆に、アメリカ人は、
みんながアメリカ人の真似をしたがってると思ってる。
アメリカ人が傲慢やって言われるのはそのせいやろね。

日本もアメリカも、
カタチは真逆にあるけれど、
自分たちの文化を特別だと思ってるのは一緒やね。
アメリカを離れて日本で暮らして、
日本人とアメリカ人の両端の特別意識が見えた。

この先、アメリカに帰っても、
国際交流に関係する仕事に就こうと思ってる。
日本での経験を生かして、
さっき話した40過ぎの友だちみたいに、
ほんとに心の開いた人間になって、
ほんものの国際交流をしていきたい。

 

アメリカ・20代後半・男性

 
 
     

mail@i-origin.com mail@i-origin.com

このページの先頭へ






言葉の工房 オリジン / 企画編集・執筆 紙からWEBまで

Copyright(C)2006- MasakoInoue/Origin All rights reserved.