Person 8(後半)
笑顔の後ろでナイフをかまえているようで、
日本では、人といると緊張する。
人なつっこい自分にもどれる国に帰ります。
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ふだん親しく話しているのに、
ぼくに対して思っていることは、
面と向かって、目の前にいるぼくに伝えてくれない。
そういう陰を感じてしまった相手とは、
怖くて友だちにはなれない。
そう思ったのが、
日本人との付きあいに消極的になった
きっかけだった。
心の中では、
ぼくのことをどう思っているのかわからないのに、
表面では親しそうに話している相手、怖い。
ぼく、子どもっぽいけど、日本のマンガが好き。
日本のマンガは、
悪い相手でも殺さずに、
心を入れ替えさせるように、がんばって
その相手を自分の仲間にするでしょ。
日本の子たち、
あんなにいい友だちを描いたマンガを見て育って、
どうして、友だちの意味を知らないんだろう。
友だちって呼び合って、
親しそうに話しているのに、心の中はみせない。
日本人は心を開いていないわけじゃないと思う。
けど、全開していない。
心を開いていても、最後に一個、
なにか秘密兵器を隠しているような気がする。
タイにも“知り合い”というコトバはあります。
でも、それは社会人になってから使うコトバ。
子どもや学生のうちからは、使わない。
知り合った相手とは、
興味が合えばいっしょに行動して、
友だちになっていく。
心の中で思っていることを言わないで、
いっしょに、いたりしない。
学校で会う若い子たちでそれだから、
日本人って、怖いと思うようになった。
笑顔の後ろでナイフをかまえていそうで。
戦場で暮らしているみたいで精神的に疲れる。
家から一歩出たら、人がいて安心できない。
ぼく、日本に来てからストレスいっぱいです。
プレッシャーでストレスたまるんです。
日本に飛行機が着いたとたん、
プレッシャーを感じて、ストレスになるんです。
外国にいるからの緊張感とは違うと思います。
日本人は外国に行くと解放されるでしょ。
日本人も日本から出た方が解放されている。
日本では、家を一歩出たとたん、体が警戒するんです。
人がいるから、気を許せない。
日本に来てから、ぼく、顔が変わった。
あのタイ人、顔、こわいって言われる。
ぼく、ほんとはやさしい人、ほんとに。
ケンカとかも弱いタイプだし、こわい人じゃない。
でも日本では、
警戒から表情がどんどん硬くなっている。
自分でも、それは分かる。
ぼく、本来は人なつっこくて、人にすぐ声をかけるのに。
タイではそうだった。
向こうでは、人が声をかけやすい雰囲気だから。
日本に来てからは、人に声をかけられなくなった。
人がそういう雰囲気じゃないから。
タイでは電車で弱い人に席を譲ったり、
荷物を持ってあげたりするのは当然でした。
日本に来ても、まだ自分がタイ人のままのときは
席を譲ったりしていたのに。
最近は日本の社会の流れに合ってきて
譲らなくなりました。
ぼくも、変わってしまいました。
ぼくが変わってしまったように、
日本人が、戦ってるみたいになったのには、
そうなる理由があったんだと思います。
日本には夢があってきたんですけど、
その夢、忘れました。
日本に来て、夢のことを考えるゆとりがなくなった。
大学院まですすんで
もっと建築工学を学びたかったけど。
言葉の壁と、精神的な疲れと。もう無理です。
大学を卒業した後、日本で就職する気はないです。
日本の人間関係の中で生活していく気はない。
学生の間でこれなのに、
就職してやっていける自信がない。
まだ自分がタイ人のあいだに、タイに帰ります。
最近、国に帰ると、変わったって言われる。
さっきも言ったように、ぼくもそう思います。
日本人の考え方を知らなければ日本語を話せないから、
日本の考え方を真似する。
それでだんだん影響を受けて、変わっていると思う。
たとえば、すごく考え方がビジネスライクになってる。
タイの友だちと、すこし違ってきてる。
最初に、日本はモノは発展してるけど、
心は育ってないって言ったでしょ。
そう言いながら
ぼくも、モノが発展してる便利さを、
普通に思うようになってきた。
タイでは椅子が欲しいと思ったら、
自分で椅子をつくる。
日本では椅子を買う金をつくって、椅子を手にいれる。
ぼくも日本に来て、
自分で何かをつくることがなくなった。
まず、金をつくることを考えてる。
金をつくることが一番。
すべてのことを金で考えたら、
金の価値がなくなったとき、
何もできない自分になってしまう。
怖いと思う。
怖いと思っている間に、タイに帰ろうと思う。
タイ・20代前半・男性
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