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在日外国人インタビュー集

     
 

Person 5 (前半)

すべきカタチさえつかめば、心をこめなくてもいい。
そう覚えてから楽になった。
心をこめるところと、こめないところを使い分けるのが
日本での人づきあいのコツ。

 

英国で暮らしていたころ日本人の男性と出会い、
日本に来ました。
どちらかが異文化のもとで暮らすことになるのなら、
女性の方が強いと思った。

適応力とか、耐える力とか、
根気よく状況を変えていく力とか。
女性の方が、自然に近い本能的な力の強さをもっていると。
だから女であるわたしが、
違う文化のなかで暮らすことを選んだ。
相手を自分の文化に引っぱりこんで気をつかうよりも、
自分が相手の文化を受け容れていこうとする方が
気もちが楽だったし。

わたしが日本に来た1970年代半ばごろは、
外国というものは、いまよりもっと遠い存在だった。
まず海外旅行の費用の高さ。
経済面から見ても、
日本はそんなに簡単に行き来できるところではなかった。
そして結婚に対する意識の重さも、今とは違った。
日本に来て暮らすことを決めたときには、
家も家族も捨てる決心で、
二度とスペインには戻らないくらいの覚悟があった。

それだけ強い決心で始めた日本での生活だから、
日本に来て10年間くらいは、
日本人よりも日本人になろうとしていた。
それは楽なことではないと思ってはいたけれど、
スペインと日本では、
人が生きていくために大切にすること、
価値観があまりにも違っていた。
わたしはスペインで、自由になるために育てられ、
日本に来て、自由でいることが罪だった。

自分の気持ちには関係なく、
嫁ならこうすべきであるということに、
従うのがなにより大切だった。

たとえば、結婚後の家族、親戚、近所への挨拶のとき、
服もお仕着せで。
わたしという人間の個性も、思いも、
嫁ならこうあるべきというカタチに
消しとばされてしまった。

結婚して間もなくのころ、こんなこともあった。
夫のお弁当のおかずを詰めていたら
夫の母に横から
「これはお弁当のおかずらしくないから」と、
とられてしまった。
わたしは、夫のことを思いながら、
自分のクリエイティビティやイマジネーションを
働かせて一所懸命つくっていたのだけど、
らしくないからって理由で、拒絶されてしまった。

小さなことかもしれないけれど、
毎日の暮らしのなかで、一つひとつ、
“らしくない”といっては、
わたしの思いを拒絶されていく。
わたしという人間の個性は、よけいなものだった。

夫の母に対して、
ほんとうの娘になろうとしたけれど、
それも無駄なことだった。
姑はいい嫁だけが欲しくて、いい娘はいらなかった。

それが分かって、
イマジネーションを働かせることを止めました。
そうして必要に応じて、
嫁としてこうすべきだというカタチをこなすようになってから、
楽につきあえるようになった。

日本に来てからの10年で覚えたことは、
心をこめるところと、こめないところを使い分ける。
そうすれば、人とのつきあいは楽にできるということ。

あのころ、日本人になろうとしていたころの自分は、
日本人の良さをもたず、
西洋人の良さもない人間になっていた。
日本に来たから日本人になろうとしたのが、間違いだった。

わたしはやはり、西洋人。
いま、わたしは自分のことを洋モノだと思ってる。

だから、ムリして日本人になろうとするのではなく、
日本文化の良いところを学びながら、
自分というアイデンティティに、 日本らしさをプラスしている。
わたしが自分自身で良いと思う日本文化を、
自分の豊かさのために、人間性を豊かにするために、
すすんで取りいれてる。

そして、そう考えるようになってから、
日本人だとか、西洋人だとかを越えて、
周囲から、わたしという一個の人間性が認められるようになった。

わたしという個性を認めてくれる人との、
人間関係が構築された。

その人間関係は、インターナショナルなもの。
国籍を問わず、お互いの個性を認めあえる人たちの関係。
そこでのわたしには、個性が、自由が許されている。

自分のなかでの文化のぶつかりあい、葛藤、戦いを経て、
自分を取り戻して、
わたしは個人である自分の価値をふたたび認められた。
楽になった。

日本に来てから、いろいろの外国人にあったけれど、
日本に来た外国人の多くは、
すぐに帰るか、気を狂わせるかのどちらか。
日本人はガイジンを除け者にするから。

              後半につづく    

スペイン・40代前半・女性

 
     

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