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在日外国人インタビュー集

     
 

Person 2

故郷を離れて暮らして
いちばん恋しいのは、中国人の人情。
心をさらけだして交わる、人と人との情のつながり。

 

80年代に中国で起こった留学ブームに乗って、
日本に来ました。
若い、学生の年代に、
“文革”で 勉強できなかった反動から、すごく学びたくて。
子どもを夫の母に預けて、単身留学してきました。
中国語講師と、飲食店でのアルバイトのかけもちで
生計を立てながら勉強しました。
来てからのしばらくは、ほんとに辛かったです。
貧しくて、辛くて、寂しかったです。

今は大学の教師という職を得て、
理解のある人たちに囲まれて、
そんな辛い思いをすることはなくなりましたけど。
当時はアルバイト先の飲食店で、
外人、外人と、バカにされたり、見下されたり。

古い歴史のなかの中国は尊敬されても、
貧しさをもった中国はバカにされる
のです。
アジアから来た貧しい外人だと見ると、バカにされる。
貧しさや寂しさ以外にも、辛いことが多かったです。

人間って、あんまり辛すぎると、
辛いって人に言えないものですね。
ほんとうに辛かった時期には、
その辛さを国の友人にも言えませんでした。
アルバイト帰りの夜道で、野良の子犬を見つけて、
その子犬相手に話をして、泣いて。
貧しくて、辛くて寂しい時が、
少しマシになってから、やっと国の友人に、
心の辛さを話すことができました。
でも、がんばってその時代を乗り越えたから、
今は仕事も暮らしも大丈夫。
夫や娘と一緒に、安定した生活をしています。
もう、日本にも、何でも話せる友人もいますし。

このまま日本で生涯を終えたいか?
それは、やはり中国に帰りたいという思いは
あります。今の日本での暮らしよりも
貧しくなったとしても、帰りたい。
日本にも何でも話せる友人はいるけれど、
中国にいる時、パッと感情を出せるのです。

中国には親戚がいる、おいしい四川料理がある、
そして何より中国人の人情がある。
中国人の人情の中にいると、
パッと素直な感情を出せる
のです。
それを恋しく思うのは、
中国人として自然なことですね。

そう…私が外国人だからなのか、
日本では、 人と人との交わりが非常に淡く薄いと感じます。

どう言えばいいのでしょうか…。
たとえば、中国人が暮らす家の窓は、
その中の人の生活を想像できるのです。
けど日本人の窓は、うすらぼんやりしていて、
中にいる人の姿を思い浮かべることができない。

いくら想像しても、
磨りガラスの向こうを見ているように、
ぼやけている。
日本で暮らして10年以上経ちますが、そうです。
もう10年たっても、そうでしょう。
人の姿は見えないままだと確信できます。

分かりますか、言いたいこと。
そう、そうですね。
生身の、情をもった人間として、
生きて暮らしている日本人の姿が見えない。

そう、そんな所でしょうか。

私の専門は演劇芸術を中心とした
比較文化論なのですが、
能には、日本人の特徴がよく表れていると思います。
能で描かれる修羅のシーン。
戦争の死者があの世に行く様子を描いた修羅のシーン。
あの修羅のシーンは、日本人のものです。
まさしく日本人の特徴です。
自分の周囲を壁で囲んで、人に対して心を閉ざして、
感情を内に秘める、内におしこめている。

日本では、今の若者もそうですよ。
あなた、見たことありますか。
若者が一日、ぼんやりムーッとしているのです。
大学に来て、授業には出ているけれど、
誰とも交わらず、ジーッとムーッとしている。
自分の周囲を壁で囲んで閉じこもった若者が、
人と交流しないで、みんなジーッと座っているのです。

見ていて心配になりますよ。

日本は自殺者が多いでしょう。
心の奥底を人に開いて、
意見を、考えを、語り合うことができないから。
だから自殺する人が多くなる。
人は誰でも解決できない深い悩みがある。
それを誰にも言えず、
自分の内におしこめたまま自殺していくのです。

私も日本に来てからのしばらく、
辛い心のうちを誰にも言えず、辛抱したことがある。
自分の心を自分の内に抱え込んで。
しかしあれは、あの時は、
自分が何をどう乗り越えなければいけないのか
分かっていました。
自分では、どうしても解決できない悩みを
自分の中に閉じこめていたのではなかった。
泣き言を言うことと、
悩みを打ち明けることとは、違います。

自分の心を人に見せることができれば…。
自分の中に閉じこもらずに、
心の奥底を話し合えたら、
自分の考えに落ち込まず、人の考えを聞いて、
別の意見を見つけ出して生きていけるものです。


中国・40代前半・女性

 
     

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